「コロナと共生」本格化 5類移行で戻る日常、続く警戒
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが8日、季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。政府が求めてきた待機要請などの感染対策は個人や企業の自主判断に変わった。経済や社会がコロナ前の日常風景に戻ろうとする一方で、「コロナとの共生」を警戒する声も残る。
コロナは7日まで感染症法上の2類以上に相当する「新型インフルエンザ等感染症」に位置づけられてきた。同法に基づいて講じてきた感染対策は5類移行に伴い法的根拠を失った。特例的なコロナ対応は大きく変わる。
検査費や外来でかかる医療費は公費による負担が原則終了する。厚生労働省の試算によると、3割負担の場合で外来医療費は4170円になる。入院費は9月末まで最大2万円補助する。
ワクチンは2023年度中は無料で受けられる。接種時期は、春夏(5月8日〜8月)と秋冬(9月以降)の2回ある。春夏の接種は8日、高齢者ら重症化リスクの高い人や医療従事者を対象に始まった。5歳以上の全ての人は、秋冬が次の接種の機会になる。24年度以降の接種は今後、検討する。
法律に基づいて要請していた感染者や濃厚接触者への待機期間もなくなる。政府は5類移行後は、感染者の療養期間について、発症翌日から5日を目安とした。
学校でも、児童や生徒が感染した場合の出席停止期間が発症翌日から原則5日に短くなる。これまでは7日だった。文部科学省は5類移行に伴って学校向けの「衛生管理マニュアル」を改訂し、児童・生徒の毎日の体温チェックや校内の日常的な消毒作業を不要とした。
社会が正常化に向かうなかで、感染防止の役目を終えたコロナ対策の器具をリサイクルする取り組みも始まった。
プラスチック製品を開発・販売する緑川化成工業(東京・台東)は、ホームページ上でアクリル板の回収を呼びかけ、23年4月時点で約2トン集まった。パーティションは10月以降、粉砕や溶解の工程を経て再生率80%のアクリル板に生まれ変わる。公共交通機関の案内表示や文具などに活用されるという。
マスク着用は5類移行に先行して3月13日から屋内外を問わず個人の判断となっている。JR東京駅周辺では8日朝も、感染防止のためマスク着用を続ける通勤客の姿が目立った。
飲食店に勤務する女性(39)は「自分の飛沫で客に感染リスクが生じる可能性もある」としばらくマスクの着用を続ける考えだ。マスクなしで出勤したシステムエンジニアの男性(29)は「街を歩いていると周囲の視線を感じることが今もある。それぞれの判断が尊重される雰囲気が広がれば」と語った。
国際機関や日本政府は一定の警戒を続けるよう呼びかける。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は5日、コロナの緊急事態宣言終了を発表した記者会見で「宣言の終了で、(各国は)国民に新型コロナは心配ないというメッセージを送ってはいけない」と訴えた。
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