英HSBC、「アジア分割」株主提案を総会で否決
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【ロンドン=大西康平】英HSBCホールディングスが5日に開いた株主総会で、アジア事業の分割上場案を含めた構造改革の検討と四半期ごとの進捗報告を求める株主提案が否決された。株主提案を巡ってはHSBCの取締役会が反対を推奨する一方で、筆頭株主の中国平安保険は賛成を表明しており、対立が鮮明となっていた。
株主提案への賛成票は2割弱にとどまった。HSBCのマーク・タッカー会長は「大多数の株主が銀行の戦略を支援する投票行動をしたことをうれしく思う。取締役会と株主は、顧客に注力して業績を拡大し、投資家により多くの価値を生み出すという共通の目的に向かって前進することができるようになった」とコメントした。
株主提案は個人投資家グループが提出し、4月にHSBC株の約8%を保有する中国平安が賛成を表明する声明を出していた。中国平安は「最も収益性の高いアジア事業に専念できる経営陣をそろえることで、より多くの株主利益を生み出せる」とのメリットを主張し、分割上場後の新会社の本社を香港に置くことを求めていた。
これに対し、HSBCはアジア事業の分割案は「経営戦略の基盤となっている国際的なビジネスモデルを著しく弱める。株主価値の重大な損失をもたらす」と批判する声明を発表していた。顧客に対する国際的な金融サービスの負担増や調整不足を引き起こすとともに、IT(情報技術)システムや資金調達費用が大きくなると指摘していた。
総会では新型コロナウイルスの感染拡大前の水準まで増配するよう求める株主提案についても、同様に賛成票が2割弱にとどまり否決された。