[社説]強制不妊の救済をもっと広く - 日本経済新聞
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[社説]強制不妊の救済をもっと広く

旧優生保護法のもとで不妊手術を強いられた障害者らへの救済が滞っている。被害者に一時金を支払う法律が2019年4月にできたが認定は1千人余にとどまる。約2万5千人とみられる旧法下で手術を受けた人の4%ほどにすぎない。救済を広げるべきだ。

旧優生保護法は「不良な子孫の出生防止」などとして1948年に制定された。96年に母体保護法に改正されるまで半世紀近くにわたり、本人の同意のない手術まで認めていた。

一時金の請求期限は5年間で、あと1年を切っている。すでに亡くなった人もいるだろうが、制度の情報が届いていなかったり、根強い差別を恐れて声を上げられなかったりする人もいよう。

国は手術を受けた人に個別に知らせる仕組みを設けていない。周知を徹底するとともに、プライバシーに配慮しながら申請を促す仕組みをもっと工夫できないか。

また、320万円という一時金の水準も改めて検討したい。被害者が国に損害賠償を求めた訴訟では22年2月の大阪高裁判決以降、国に賠償を命じる判決が7件も下されている。認められた慰謝料は1500万円が多く、一時金との差は大きい。

当初の裁判では請求が認められなかった。不法行為から20年たつと賠償請求権が消える「除斥期間」が立ち塞がっていたためだ。最近は、除斥期間の適用は著しく正義に反するとの司法判断が相次いでいる。被害と差別の深刻さを考えれば納得できる判断だ。

原告団や弁護団、支援団体は、政府や国会に対し、裁判を和解により早期に決着させることや、すべての被害者への全面解決を図ることなどを求めている。

一時金の支給法は、最初の判決も出ていなかった時期に議員立法で成立した。早期に政治が動いた意義は大きいが、その後の司法判断や救済の進展を受け、法律を柔軟に見直してこそ、政治による救済の意義は高まる。被害者の多くは高齢であり、時間との勝負だ。

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