[社説]シャトル外交重ねて日韓関係を強固に - 日本経済新聞
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[社説]シャトル外交重ねて日韓関係を強固に

岸田文雄首相と韓国の尹錫悦大統領がソウルで会談し、安全保障や経済など幅広い分野での連携を強めると確認した。東京で開いた前回会談から2カ月足らずでの首脳往来は信頼の醸成につながると評価できる。シャトル外交を重ねて隣国関係を強固にすべきだ。

首相は19〜21日に広島で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)にも尹氏を招待している。このスピード感は特筆すべきだ。日本との未来志向の協力関係を進めることが国民の多大な利益になるとして過去を蒸し返さない尹氏の姿勢によるところが大きい。

首相は1998年の日韓共同宣言など歴代内閣の歴史認識を引き継ぐと語った。同宣言にある「植民地支配への痛切な反省と心からのおわび」といった表現には言及しなかった。一方で会談後の共同記者会見で元徴用工について「当時、厳しい環境のもとで多数の方々が大変苦しい思いをされたことに心が痛む思いだ」と述べた。

両首脳は広島サミットの際に同市の平和記念公園にある「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」を一緒に参拝することでも一致した。こうした首相の思いが韓国の人々に届くかを見極めたい。

東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出計画に関しては韓国の専門家による現地視察団を受け入れる。韓国は食の安全の観点から処理水への関心が高く両首脳が合意できたのは前進だ。様々な協力を積み重ねながら相互不信を解消できれば望ましい。

複雑な国民感情が絡んだ日韓関係は首脳外交がとりわけ重みをもつ。過去には中曽根康弘、小渕恵三両首相らが政府の先頭に立って難局を打開した。逆に歴史問題や対北朝鮮政策をめぐる首脳間の相互不信によって日韓関係が転落したケースも少なくない。

外交懸案があるときこそ両首脳が頻繁に行き来し、胸襟を開いて話し合うとのシャトル外交の原点に立ち返る必要がある。このところ日韓の安保対話や財務相の正式会談がそれぞれ5年ぶり、7年ぶりに相次ぎ動きだしたのも首脳外交の成果にほかならない。

日韓は中国や北朝鮮などの軍事的脅威への抑止力の強化や半導体のような戦略物資での経済安保など手を携えられる余地が大きい。勢いを取り戻した人的交流を含む重層的な結びつきが強まるのを期待する。両首脳はそれを主導する責務を担うと念押ししたい。

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