[社説]「1円スマホ」は弊害が大きい - 日本経済新聞
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[社説]「1円スマホ」は弊害が大きい

スマートフォンを「1円」ないしそれに準じた超廉価で販売し、携帯通信の新規加入者の獲得につなげる商法が復活してきた。極端な廉価販売は競争環境をゆがめるなど弊害が大きい。携帯各社は是正に取り組むべきだ。

スマホの廉価販売は総務省の有識者会議でもかねて問題視され、今年2月には公正取引委員会が実態調査結果を公表した。それによると2022年前半に1000円以下の廉価で販売されたスマホ端末が全体の15%を占めた。

極端な安売りによる端末販売の赤字を、通信料収入で補塡しているケースがかなりあることも明らかになった。

廉価販売は一見、消費者利益にかなうが、採算を度外視した安売りは公正競争の土台を損ない、長期で見ればマイナスが大きい。

ひとつはスマホ販売市場の競争をゆがめることだ。NTTドコモなど携帯大手3社とその系列ショップは通信料から赤字補塡できるが、それ以外の家電量販店や中古スマホ販売会社は市場から締め出される恐れがある。公取委は独占禁止法の禁止する「不当廉売」につながる可能性を指摘した。

ふたつめは利用者間の公平だ。頻繁にスマホを買い替える人が恩恵を受ける一方で、同じ携帯会社と契約し、同じ端末を長く使う人は不利になる。安く手に入れた端末を高値で売る「転売ヤー」の横行は社会問題化した。公共の電波を利用する携帯会社が、社会的不公正を助長しかねない商慣行を続けるのはやはり問題が大きい。

過剰な値引き合戦が通信料金の高止まりやサービスの停滞を招く恐れもある。総務省の要請で日本の通信料金がある程度、下がったのは事実だが、さらに下げる余地はあろう。端末の安売りに投じる原資を「5G」の用途開発などサービスの高度化に振り向ければ、企業の競争力強化や国民生活の充実につながるはずだ。

政府の介入を待つまでもなく、携帯各社は自ら商慣行を見直し、健全な市場環境を築くべきだ。

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