[社説]薬の販売に残るアナログ規制の見直しを
薬剤師によるオンライン服薬指導が解禁され、患者は医師の判断が必要な処方薬を自宅にいながら手に入れることが可能になった。しかし、処方箋が要らない市販薬なのにインターネット販売が認められていない薬がある。
要指導医薬品という分類の薬で薬剤師が常駐する店舗での対面販売しか認められていない。副作用リスクが小さい一般用医薬品はすべてネット販売が可能になっているので、この分類の薬だけが医薬品販売のデジタル化から取り残された形になっている。
要指導医薬品には花粉症の薬や尿漏れ改善薬などがあり、外出せずに購入できれば患者の利点は大きい。書面・常駐などのアナログ規制をやめて「デジタル完結」を目指す政府のデジタル原則を踏まえ、要指導医薬品の販売でもデジタル対応を認めるべきだ。
もともと薬のネット販売は、一般用医薬品のなかでも最もリスクが小さい区分の薬だけに認められていた。2013年に薬のネット販売の一律禁止を違法とする最高裁判決が出たため、すべての一般用医薬品のネット販売が解禁されたが、このとき、処方薬に準じた慎重な販売を促す仕組みとして新設されたのが要指導医薬品だ。
処方薬から市販薬に転用されたばかりの薬を位置づけ、安全性に問題がなければ、原則として3年後に一般用医薬品に移管するルールになっている。
薬の情報を患者に理解してもらい、正しい服用につなげることは重要だ。その際、薬のリスクの程度に応じて説明や確認のレベルに濃淡をつけるのが適切だろう。
処方薬のデジタル対応の場合、医師の判断に加え、ビデオ通話を使った薬剤師のオンライン服薬指導を求めている。一方、一般用医薬品は薬剤師や登録販売者が患者とメールをやりとりして説明や確認をすれば販売できる。
リスクの程度がこの中間にある要指導医薬品については、薬剤師がビデオ通話でオンライン指導する案を軸にデジタル化のルールを検討するのが妥当ではないか。
厚生労働省の検討会では「薬の乱用を防ぐには対面での相談機能が必要」などとオンライン服薬指導への反対意見が目立つ。だが対面でも不適切な販売事例はある。
対面とデジタルを機械的に線引きするのではなく、デジタル原則に即して、安全と利便性を両立する販売ルールにしてほしい。