[社説]FRBは利上げ最終局面に細心の対応を - 日本経済新聞
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[社説]FRBは利上げ最終局面に細心の対応を

1年あまり続いた米国の急激な金融引き締めが最終局面を迎えた。米連邦準備理事会(FRB)は2〜3日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%引き上げることを決めた。声明では今後の利上げ継続を「予告」する表現を削除し、利上げの打ち止めを示唆した。

「追加的な引き締め」の可能性を排除しない玉虫色の表現を残し、情勢次第ではさらなる利上げに動ける余地も確保した。

金融と物価の安定の両立は難しさを増している。FRBには、これまで以上に丹念な情勢判断と市場への情報発信が求められる。

利上げは昨年3月から10会合連続となった。政策金利は5.0〜5.25%と下限でもリーマン危機前の2007年以来の5%に乗せ、昨年12月から利上げの「到達点」に掲げてきた水準に到達した。

米国では3月のシリコンバレーバンク(SVB)から5月初旬のファースト・リパブリック・バンク(FRC)まで、2カ月足らずで3つの銀行が経営破綻した。

預金流出の激しいほかの地銀株が売られ、不安心理の広がりが金融システムを揺るがす懸念は残る。多くの銀行が融資基準を厳しくし始めており、企業や家計の資金調達の環境が悪化して景気を下押しするリスクも高まっている。

一方で賃金上昇の影響を受けやすいサービス分野を中心に、インフレ率は高止まりが続く。引き締め的な金融環境を保ち、経済全体の需要を抑え、労働市場の過熱を和らげる必要がある。金融安定の目的を理由に、簡単に金融緩和へと転じられる状況ではない。

パウエルFRB議長は「経済活動を過度に減速させるリスクと不十分な対応でインフレを制御できないリスクのバランスをとる」との見解を示した。

不透明な情勢を前に、政策の柔軟性を確保する姿勢は理解できる。正確な情勢判断と市場との丁寧な対話を期待したい。FRBの意図が市場に伝わりにくくなると、市場の混乱に拍車をかけかねない点には注意が必要だ。

パウエル氏は銀行破綻を巡る監督責任を巡り「間違いを犯した」と認め、規制・監督の強化を急ぐ方針を強調したが、対応は金融監督担当のバー副議長に委ねる意向を繰り返した。金融・経済情勢が不透明なだけに、議長のリーダーシップと混乱の収束に向けた強い決意と具体策も重要になる。

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