[社説]有効な規制・監督で金融不安を早く断て - 日本経済新聞
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[社説]有効な規制・監督で金融不安を早く断て

(更新)

富裕層取引に強みを持つ米地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)が1日、経営破綻し公的管理下に置かれた。約2300億ドルの資産を持つ同行の破綻は米銀として過去2番目の規模だ。

米銀最大手JPモルガン・チェースがFRCの預金・資産の買収を発表したが、預金者や投資家の動揺が鎮まったとはとても言えない。米金融当局は有効な銀行規制・監督を早く具体化し、不安心理が金融システム全体に広がる負の連鎖を防いでほしい。

米国では3月のシリコンバレーバンク(SVB)に始まり、2カ月足らずで3つの銀行の経営が破綻した。一連の破綻からは共通の構図が読みとれる。

新型コロナウイルス禍の中の財政出動と金融緩和でお金がだぶつき、銀行がそれを預金で受け入れ融資や債券投資を増やした。米連邦準備理事会(FRB)がインフレ退治で利上げに転じると、銀行は資産に損失を抱え、信用不安から預金流出が始まった。

FRCの場合、SVB破綻後に大手11行から資金支援を受けた。しかし、今年3月末の預金が22年末比4割減というマネーの逃げ足の速さは想定以上だった。

JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は「銀行システムを安定させることができたのは良いこと」と買収の意義を強調した。しかし、預金が流出している地銀は他にもあり、株価は弱含みだ。買収に名乗りをあげる一部の大手銀に、預金者の保護や不安心理の封じ込めを頼り続けることはできない。

FRBは4月28日に発表したSVB破綻に関する報告書で、今後の銀行監督の方向性を示した。リーマン・ショック後に強化された規制の適用が緩くなっていた中堅銀行への監督を再び厳しくし、資産の質や資金繰りなどを精査するという。業務への負担軽減を理由に甘くなりがちだった当局の経営指導も厳格化されそうだ。

今後は預金保険料の引き上げや、信用不安を増幅しかねないSNS(交流サイト)への対処などの議論も深めてほしい。さらに、金融システムの傷み具合を見極め、公的資金投入の制度整備も検討が必要になるのではないか。

米国の金融不安が止まらないと影響は世界に及ぶ。銀行が債券投資を増やした日本も無縁ではない。景気に目配りしつつ、米当局に断固とした行動を望む。

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