[社説]自然生かしたインバウンドを - 日本経済新聞
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[社説]自然生かしたインバウンドを

インバウンド(訪日旅行)市場が回復してきた。新型コロナウイルス禍の前から、外国人観光客の訪問先が都市部に集中している点が日本の課題となっていた。地方に足をのばし、森や海など日本の豊かな自然をもっと旅行者に楽しんでもらうよう工夫したい。

欧米など海外では自然を楽しむ観光が盛んだ。エコツーリズムやネーチャーツーリズム、アドベンチャーツーリズムなどと呼ぶ。訪日旅行では買い物や都市型文化が人気を集める一方、地方の自然はまだ生かしきれていない。

コロナ前、外国人の宿泊の約65%を東京など上位5つの都道府県が占め、混雑の一因となった。沖縄県は集客数で米ハワイ州と同水準だが1人当たり消費額で半分以下にとどまっている。自然の魅力で広い地域に足を運んでもらうとともに、地域の経済振興にきちんとつなげるようにしたい。

そのためには、まず都市観光と異なり県などをまたぐ協力体制が求められる。快適な宿泊・飲食施設の整備や専門知識を持つガイドの育成も必要だ。欧州の山岳リゾートでは山歩きなどの案内人は地位や収入の高い職業だという。稼げる職業が増えれば都市からの移住者増も期待できる。

自然観光の壁の一つは移動手段だ。山間部や離島は公共交通が乏しく、国内旅行者と異なりマイカー移動は難しい。諸外国のようなライドシェアサービスがあれば喜ばれ、地域住民の収入にもなる。ふれあいが生まれ、住民主導の観光地作りの素地となろう。運転は難しいが自然を楽しみたい国内高齢者の集客にも役立つ。国土交通省は規制緩和を検討すべきだ。

一方で観光振興は自然破壊や乱開発の危険もはらむ。海外の一部観光地のように受け入れ人数を制限することも持続可能性とブランド力の向上に役立つ場合がある。

自然派の旅行者は環境問題に敏感なのでプラスチック食器は避けるなど、これまでとは異なる気遣いが要る。先行事例を手本にしつつ、取り組みを加速したい。

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