[社説]実効あるAI国際ルールの構築へ知恵を - 日本経済新聞
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[社説]実効あるAI国際ルールの構築へ知恵を

群馬県高崎市で開いた主要7カ国(G7)のデジタル・技術相会合が、人工知能(AI)の開発と利用に関する国際ルール作りを進めることで合意した。「チャットGPT」など巧みに文章や画像を作れる生成AIが急速に普及するなか、規制の必要性で一定の共通認識ができたことを評価する。

ただ、国際ルールが十分な役割を果たすには主要国以外の多くの国・地域でも実効性が必要だ。関係する政府や企業は知恵を絞ってこの難題に取り組んでほしい。

規制の形態についてG7の足並みはそろっていない。欧州連合(EU)はAI規制専用の法律を制定すべく2021年から法案の検討を進めている。日本はガイドラインと自主規制による規律を志向する。米国は既存の法律・制度の手直しに動いている。

そこで会合が出した閣僚宣言は、各国・地域で異なる規制・制度の「相互運用性」の確保を提唱した。AIを使った製品・サービスのリスクを評価・管理する国際的な枠組み作りや、国際技術標準の構築を進めるという。現段階で考えうる現実的な解といえる。

技術標準については国際標準化機構(ISO)のような、産官学が参加する団体による策定・運営を念頭に置いている。国際標準が浸透すれば製品・サービスの市場が地球規模になるため、民間企業が自主的に踏襲するインセンティブが働く。国境や政治体制をまたぐ規律の形成に有効なはずだ。

一方、G7会合が提唱した人権と民主主義の価値観の尊重を全世界に徹底させることは現実的には難しいだろう。中国などの権威主義国で、個人の行動や発言の監視・統制にAIを活用する動きが着々と進んでいるからだ。

人権やプライバシーを侵害するようなAIの広がりを防ぐには、理念を説くだけでなく、貿易管理など強制的に執行できる統治の仕組みが必要になろう。

AIのリスク管理では学界や企業の努力が求められる。AIが結論や作品を生み出す仕組みの解明と説明が不十分だ。チャットGPTの開発元が最新型の技術仕様を公開しないのも問題が大きい。

今回の閣僚宣言も透明性の確保や偽情報への対処、著作権の保護などをAIの喫緊の課題に挙げる。解決にはAIの「思考回路」と学習内容の明確化が必要だ。それらを可能にする研究開発を加速してほしい。

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