[社説]トヨタグループは不正撲滅を徹底せよ - 日本経済新聞
/

[社説]トヨタグループは不正撲滅を徹底せよ

トヨタ自動車の中核グループ企業で、また看過できない不正が見つかった。100%出資するダイハツ工業が海外向けに開発した車で、安全試験の認証手続きを欺いたという。

日本を代表するメーカーがグループ内にどんな病根を抱えているのか。原因究明を徹底した上で、トヨタはグループを挙げて再発防止に取り組まなければならない。日本企業全体の信用力にも関わる問題だ。

トヨタグループでは2022年に日野自動車がトラックの排ガスや燃費をごまかす悪質な不正が発覚した。トヨタの源流企業でもある豊田自動織機でもフォークリフトを対象に同じような排ガスデータの改ざんが明らかになった。販売子会社では車検を巡る不正が発覚したばかりだ。いずれも耳を疑うような不祥事である。

今回明らかになったダイハツの不正は、側面衝突試験をクリアするために、ドアの一部に本来の設計にはない加工を施したものだ。対象となるのは約8万8000台。ダイハツだけでなくトヨタのブランドでも売られている。

原因の究明はこれからだが、ダイハツの奥平総一郎社長は現場に「かなりのプレッシャーがかかっていた可能性がある」と説明する。衝突試験で不合格となれば車両の開発計画全体が停滞しかねない。そんな事態を避けなければならないという圧力が、現場を不正に走らせたのではないかと見る。

いずれにせよ、これでは安全試験の意味をなさない。トヨタやダイハツの車に乗るユーザーを裏切る行為だ。トヨタの豊田章男会長も「車の安全性に関わる問題であり、絶対にあってはならない行為」と認める。

車の開発や生産、販売にはトヨタだけでなく関連企業も含めて膨大な数の組織と人が関わる。その力を絶妙に擦り合わせる点に、日本車メーカーの強みがあった。

だが、一連の事態から透けて見えるのは、その歯車を狂わせてはならないと現場が過度な重圧を感じている構図だ。本来は強みであるはずの高度な連携が不正の誘因となったのなら本末転倒だ。

トヨタは経営陣を刷新したばかりだ。新任の佐藤恒治社長の責任は重い。これからグループ企業全体で開発現場に不正や隠蔽がなかったかを総点検するという。失った信頼を取り戻すためにも、不正の撲滅に不退転の覚悟を求める。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません