多連装ロケット砲を発射するウクライナ軍=AP・共同

ウクライナ侵攻1年
マップで振り返る

ロシアの支配面積
全土の2割下回る

多連装ロケット砲を発射するウクライナ軍=AP・共同

ロシアがウクライナに侵攻を始めてから24日で1年。圧倒的に優勢とみられていた軍事大国のロシアに対し、ウクライナは抗戦を続けている。米欧による軍事支援も、領土奪還を目指すウクライナ軍を支えた。一進一退の攻防が繰り広げられた戦況を地図で振り返る。

侵攻前

ロシアは侵攻前からウクライナ南部クリミア半島と東部ドンバス地方(ドネツク州とルガンスク州)の一部地域を実効支配していた。2014年にクリミアの併合を一方的に宣言し、東部では同年からロシアが支援する武装勢力とウクライナとの紛争が続いた。

ロシアが21年秋から国境地帯に軍部隊を集め、緊張が高まった。22年2月21日にはプーチン大統領が東部の親ロシア派勢力支配地域を一方的に独立国家として承認した。これに先立ちバイデン米政権はプーチン氏が侵攻を「決断したと確信」と明言した。

2022年2月24日

早朝にプーチン氏がウクライナでの「特別軍事作戦の開始」を宣言する演説が国営テレビで放送された。その直後に首都キーウ(キエフ)や東部ハリコフなど各地で爆発音が聞こえ、北・東・南の3方向からロシアが進軍した。ウクライナはロシアが「全面的な侵攻を始めた」と訴えた。

国営テレビで演説するプーチン大統領=ロイター

2022年3月24日

ウクライナの北に位置するベラルーシから進軍したロシア部隊は首都包囲を狙い、キーウ近郊に迫った。南東部の港湾都市マリウポリや東部ハリコフ、イジュームを陥落させようと激しい攻撃を続けた。ロシア軍の支配・侵攻エリアは全土の約27%に及んだ。

2022年4月4日

ウクライナ軍の抗戦をうけ、ロシア軍はキーウ近郊から撤退した。侵攻直後に占拠した北部チェルノブイリ原子力発電所からも引き揚げた。撤退後のブチャなど各地で民間人の遺体が多数見つかり、ロシア軍による拷問や虐殺の疑いが明らかになった。

2022年4月7日

ウクライナ軍の反撃で追い詰められたロシア軍は北部から完全に撤退した。ウクライナ軍は北部のチェルニヒウやスムイ周辺も奪還した。

ロシアは北部撤退後の部隊を再配置し、東部ドネツク州、ルガンスク州の攻略にむけて戦力を集結させた。

2022年5月17日

南東部マリウポリが陥落した。アゾフスターリ製鉄所に立てこもって抵抗を続けたウクライナ兵が降伏し、ロシアが完全制圧を宣言した。ロシアは南部と東部の占領地を結ぶマリウポリを戦略的に重視し、激しい戦闘が2カ月超続いた。マリウポリだけで民間人の死者は2万人を超えた恐れがあり、全容はなお明らかになっていない。

ウクライナ兵が立てこもったアゾフスターリ製鉄所=ロイター

2022年7月3日

東部ルガンスク州の制圧をロシアが宣言した。ロシアは東部2州の攻略を優先させる戦略に転換した後も、支配地域を急速に広げることはできなかった。ルガンスク州の要衝セベロドネツクの陥落には1カ月以上を要した。

2022年9月11日

ウクライナ軍が東部ハリコフ州で反転攻勢に乗り出し、要衝イジュームを奪還した。電撃的な反攻によってロシア軍は不意を突かれたとみられる。ウクライナ軍は防衛線を突破したあと、短期間で一気にロシア軍を国境まで押し戻した。

2022年9月30日

ロシアが東・南部4州の併合を一方的に宣言した。4州の占領地域で「住民投票」を強行して正当性を主張し、実効支配の既成事実化を図った。ウクライナは反攻を続け、10月2日には東部ドネツク州の要衝リマンの奪還を表明した。ロシアは9月に部分動員を発令し、兵力を補って長期戦に臨む構えを示した。

2022年11月11日

ウクライナが南部ヘルソンを奪還した。ロシア軍は部隊をドニエプル川の東岸に撤退させ、市街戦に持ち込まずに開戦直後から占領を続けたヘルソンを明け渡した。ウクライナは奪還をめざして7月ごろからロシア軍の補給網を重点的に攻撃していた。住民は国旗を掲げて到着したウクライナ軍を出迎えた。

2023年2月

東部ドネツク州の要衝バフムトで激戦が続く。ロシアは民間軍事会社「ワグネル」の部隊や部分動員で徴兵した予備役を投入し、兵士の犠牲をいとわずに消耗戦を挑んでいる。ロシア軍が2月に大規模攻撃を始めたとの指摘もあり、攻防が一段と激しくなる可能性がある。米欧がウクライナに供与を決めた主力戦車がいつ実戦配備できるかも焦点となる。

ドネツク州では激しい戦いが続く=ロイター

ロシア軍の支配・侵攻エリアの割合は最大でウクライナ全土の4分の1を超えた。割合が最大だったのは2022年3月24日の約27%で、ロシア軍が首都キーウに迫っていた時期だ。その後、ウクライナ軍の反撃でロシア軍はキーウ近郊から撤退し、東部に戦力を集中した。夏場にかけて支配・侵略エリアは約20%で膠着状態となった。22年9月以降はウクライナ軍が徐々に奪回し、ロシア軍の支配・侵攻エリアは約18%となっている。



編集
久保田昌幸、小川知世

データ
米戦争研究所、米アメリカン・エンタープライズ研究所