クレムリン無人機攻撃、ロシアで報復論 ウクライナは関与否定 - 日本経済新聞
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クレムリン無人機攻撃、ロシアで報復論 ウクライナ否定

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モスクワ中心部のクレムリンへ3日未明にドローン(無人機)による攻撃があったことを巡り、ロシア大統領府はウクライナによる攻撃だったと主張した。ウクライナは攻撃への関与を否定し、米国もロシアの主張に懐疑的な見方を示した。

ロシアでは報復論が台頭し、ウクライナの大規模攻勢を控えた前線の緊張も一段と高まる。ロシア大統領府は今回のドローン攻撃を「プーチン大統領を狙ったものである」と断定し、ウクライナによる計画だと主張した。プーチン氏は無事で、モスクワ郊外で通常通り執務をとったという。

ロシアのペスコフ大統領報道官は4日、クレムリンへのドローン攻撃について現在調査中であるとした上で「テロ行為は米国が決定しウクライナが実行した」と記者団に述べ、米国をけん制した。米国の関与について具体的な内容は示していない。

一方でウクライナのゼレンスキー大統領は3日「我々がプーチン氏やモスクワを攻撃することはない」と述べ、クレムリンへの攻撃の関与を否定した。ブリンケン米国務長官は同日「私ならロシア政府のいかなる主張もかなり疑ってかかる」と指摘し、ウクライナによる攻撃に懐疑的な考えを示した。

真偽は現時点では判然としない。ロシアの主張が事実だとすれば、ロシアは自国の防空能力に重大な欠陥をさらしたことになる。

ウクライナによる攻撃を疑問視する見方も多い。米国は紛争が激化することを警戒し、これまでロシア領内へのウクライナの攻撃を奨励しないと表明している。撃墜されたドローンの飛行ルートや、大統領を暗殺できるほどの爆薬を積んでいた可能性が低いとみられる点など疑問も残る。

通信アプリ「テレグラム」などSNS(交流サイト)ではドローンが撃墜される前にクレムリンのドームに人が登っている画像が投稿された。米シンクタンク、戦争研究所は3日の分析でドローンがロシアの防空網を突破することは難しく、ロシアの「自作自演」の可能性があると指摘。「ロシア国民に戦争を周知し、今後の動員への条件を整えるためではないか」との見方を示した。

今回のドローン攻撃は9日にモスクワ中心部で予定される対ドイツ戦勝記念日の式典前のタイミングで起きた。ロシア国内ではウクライナへの報復措置をとるべきだとの声も上がる。メドベージェフ安全保障会議副議長(前大統領)は3日「ゼレンスキー氏らを排除する以外の選択肢はない」とSNSに投稿した。ウォロジン下院議長も同日に核兵器使用示唆ともとれる表現を用いてウクライナや欧米を強くけん制した。

ウクライナ軍による反攻が迫る中、東・南部の前線や周辺地域では緊張が高まっている。ゼレンスキー氏は3日夜、SNSで、南部ヘルソン州でこの1昼夜に満たない間にロシア軍の砲撃で住民21人が死亡、48人が負傷したと明らかにした。へルソン州政府によると、死亡者は23人になった。同州ではウクライナ軍によるドニエプル川の渡河作戦が想定される。

ロシアが一方的に併合を宣言した南部ザポロジエ州のオレホフでは3日、ウクライナ軍がロシア軍を攻撃した。ロシアのタス通信が伝えた。その後、ウクライナ軍は撤退したという。反転攻勢を前にした威力偵察だった可能性が指摘されている。

東部ルガンスク州のロシア占領地の地元治安機関は4日、多数のウクライナ軍部隊が攻撃開始に向けてセベルスク方面に移動していると指摘した。東部ドネツク州のロシア占領地の治安機関も4日、州内各地でウクライナ軍が重火器を大幅に強化していると語った。

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