米気候変動特使が訪中計画 対話再開へ「安保以外」探る - 日本経済新聞
/

米気候変動特使が訪中計画 対話再開へ「安保以外」探る

【ワシントン=中村亮、北京=川手伊織】ジョン・ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は中国を近く訪れる計画だ。バイデン米政権は安全保障分野以外から対話再開の糸口を探る。2024年1月の台湾総統選後に米中対立が高まる事態に備えて正常化を模索するが、先行きは見通しにくい。

ケリー氏は5月上旬、訪問先のドイツでロイター通信の取材に対し、中国の気候変動担当特使である解振華氏と1〜2週間前にオンライン協議を実施したと明かした。中国側から近い将来の訪中を打診され、バイデン大統領が承認したと説明した。訪中に向けた詰めの協議を急ぐ。

中国は22年8月、米国のペロシ下院議長(当時)が台湾を訪れると軍高官の対話などに加えて気候変動分野の対話を中断した。ケリー氏が訪中すれば気候変動対話の正常化を印象づける。

経済閣僚も訪中を目指す。イエレン米財務長官は4月の講演で、中国に対して「健全な経済競争は長期にわたって両国に利益をもたらす」として経済協議に応じるよう呼びかけた。訪中に重ねて意欲を示したとの見方が広がった。レモンド商務長官も訪中の準備を進めてきた。

中国からみても、気候変動問題などは米国と対話に応じられる数少ないテーマだ。先端半導体をめぐる米国の対中制裁をうけ、中国は供給力の向上を急ぐが短期的な問題解決は難しい。

中国景気は「ゼロコロナ」政策の終了で持ち直してきたが、持続力には不安も残す。3月に本格始動した習近平(シー・ジンピン)国家主席の3期目政権にとって、23年の景気安定は最重要課題の一つだ。

米国のさらなる対中圧力を避けるうえでも、対話のパイプを確保しておいた方が得策だという思惑も透ける。

一方、安保での糸口は見えない。米国の安保政策の要であるブリンケン国務長官の訪中は先行きが見通せない。ブリンケン氏は5月3日のイベントで年内の訪中を目指すと言及。「あらゆるレベルで定期的な意思疎通を再構築するのが重要だ」と話し、自身の訪中は最優先ではないと受け取れる発言をした。

バイデン氏と習氏は22年11月の首脳会談で、ブリンケン氏の訪中に合意した。ブリンケン氏は23年2月初めに訪中を計画したが、中国の偵察気球が米本土に飛来したことで直前に延期した。

ブリンケン氏の訪中が実現しない理由の一つに、ドイツ南部ミュンヘンで2月中旬に開いた中国外交担当トップの王毅(ワン・イー)氏との協議が要因との見方がある。

協議の内容を知る関係者によると、ブリンケン氏が気球問題やロシアへの殺傷性のある兵器提供の可能性、北朝鮮問題などで中国批判を繰り広げた。米中協力を演出できる前向きなテーマをほぼ取り上げなかったという。

米国では、中国との対話の不足に危機感は強い。米インド太平洋軍のジョン・アキリーノ司令官は4月の下院軍事委員会の公聴会で、21年春の司令官就任以降に中国の東部戦区や南部戦区の司令官に会談を要請しているが実現していないと明かした。

米中が激しく対立する台湾は24年1月に総統選を控え、米中の緊張が高まりやすい。誤解に基づく軍事衝突の回避に向けて米中の安保高官による対話ルート確保が重要性を増す。

バイデン政権はウクライナ情勢でも中国を注視し、中国によるロシアへの武器支援に警戒を緩めていない。ウクライナによる反転攻勢の時期が近づくとみられるなかで、中国にロシアへの武器支援を引き続き思いとどまらせられるかどうかは戦況を大きく左右する要素だ。

ケリー氏の訪中が実現しても、中身のある安保対話につなげる突破口になるかは不透明だ。オバマ政権は米中の戦略・経済対話を開き、歴代政権の「関与政策」を踏襲した。対話を通じて関係を改善すれば問題解決につながるとするオバマ政権の期待は外れ、中国は対話で時間を稼いで米国からの批判を避けながら軍事や経済力を強化した。

オースティン米国防長官は6月上旬にシンガポールで開くアジア安全保障会議(シャングリラ会合)に出席する見通しだ。中国高官と接触を目指すとみられるが、実効性のある対話は見通しにくい。これまで国際会議に合わせた会談で対話ルートの確保で一致しても、その後に中国側がオースティン氏の協議要請を断ってきた経緯がある。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

バイデン政権

アメリカの「バイデン政権」に関する最新ニュースを紹介します。その他、日米関係や米中対立、安全保障問題なども詳しく伝えます。

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません