福永武彦「忘却の河」島根県大田市(写真で見る文学周遊)

 秘密や孤独、葛藤を抱える家族4人の物語が描かれる小説「忘却の河」。作者の福永武彦が着想を得た日本海沿いの波根(はね)海岸を歩いた。(2月18日付夕刊掲載「文学周遊」の取材で撮影した写真で構成しています) (18日 14:00)

福永武彦が「作品の発想となった」と、あとがきで記している波根の海岸(島根県大田市)

  • 会社の前でタクシーを降りた「私」が反対側のビルを見ると、朝の激しい日が差していた。「それは無数の、涙に濡(ぬ)れた眼だった」(東京都千代田区)
  • 30年前、「私」は恋人の看護師が住んでいた日本海の沿岸にある小さな村を訪ねていく
  • 荒波が砕けては引いていくたびに小さな石がからからと音をたてていた(波根海岸)
  • 「私」の子を身ごもった恋人は、別れを告げられ崖から身を投げ亡くなっていた(大田市波根町の立神岩)
  • 「私」は「賽(さい)の河原」で小石を拾いポケットに入れた
  • 「私」は古いアパートの部屋で、ぼんやりと掘割を眺めていた(東京都江東区)
  • 「私」は窓からその石を下の掘割に投げた。ゆるやかな波紋が、いつのまにかその輪を広げて、やがて消えていった(東京都江東区)=鈴木健撮影

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